僕の「ノスタルジック尼崎」

-horiju-

幼少の頃にWOODSTOCKのドキュメンタリー映画 でジミ・ヘンドリックスを観て、
演奏より逆さまのフェンダーストラトキャスターにただならぬ衝撃を受けました。
その勢いでギターを欲していた僕は、お金が無い為、その購入場所を尼崎の
出屋敷周辺にあった楽器専門のバッタ屋に決めました。

バッタ屋が在った通りには、４～５件同じようなバッタもんを扱う店があり、
生活用品からそれこそ楽器まで、様々などーしょうも無い物を売っていました。
目的の店は雨の日でもギターが外に吊るされ、中に入るとベースやギターが
スクラップ工場の様に横にされ、立てに積まれていて、その中からどうにか
ストラトを探すといった感じなのです(笑)
というか、とりあえず建物が曲がってました。まさに楽器の墓場。

店の前には、どう見ても楽器は弾けないであろう年齢の特定できないオッちゃんが、
白いあの乳首の透けるランニングに、紺色の小銭を入れる前ポッケつきの前掛け、
という井出達でパイプ椅子のようなものに座っていました。
どう見ても八百屋です(笑）
一抹の不安を抱えつつ、それでもギターが欲しくてタマラナイ僕は店内を
物色し始めました。

しばらく見ていると、透け乳首のオッちゃんが「ここにあるだけじゃないから、
裏の倉庫にもいっぱいあるから見いひん？」と不適な微笑を浮かべ、
がっちりカモを掴んだという目で話しかけてくれたのです。
店のすぐ裏にあるかと思いきや、けっこう距離のある別倉庫まで案内してもらって、
そこでよーやく探しだしたのがYAMAHAのストラトタイプ。
フェンダーは出て来ませんでした（涙）まぁー形は同じなのでと納得して購入しました。

するとオッちゃんが買ったギターを丁寧に息をハア～とふきかけながら、
布巾がないのか新聞紙で拭いてくれ、「ケースはどうする？」と聞いてきました。
が、お金がない僕はケースまでは買えるわけもなく、「ケースはいいです…」と返答。
商売人として裸のまま持って帰らせるわけにもいかない、とでもいうのだろうか。
オッちゃんはさっきギターを拭いていたその新聞紙で、ネックとボディを優しく包んで
くれたのです。

無事ギター購入の目的を達成し、自転車の前カゴに積み、新聞紙をはためかせ
ながら夕日に向かって立ちこぎで帰宅しました。
今はもうそのお店はありませんが、その付近を通るたび、透け乳首のオッちゃんと
少年の頃の純粋な自分を思い出し、ノスタルジーに浸れるのです。

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